「聴覚障害=全く聞こえない」という訳ではありません。
小さい声が聞こえにくい、大きな声は割れてしまって聞き取りにくい、飛行機の音すら聞こえない、静かな室内で正面から話すと聞こえるけれど騒がしい所だと分からない、音は分かるけれど何の音なのか分からない、右から鳴っているのか左から鳴っているのか音の方向が分からない等々、聴覚障害に伴う症状は十人十色それぞれ違います。
なぜ、ひとりひとりの「聞こえ」が違うのか。耳の仕組みを見てみましょう。
「耳」といって思い浮かぶのは、図にある「耳介(じかい)」の部分ではないでしょうか。
音は、②外耳道(がいじどう)を通り、その先にある③鼓膜(こまく)という半透明の薄い膜を揺らします。
鼓膜の奥には、ヒトの体の中で最も小さいと言われる骨、耳小骨(じしょうこつ)が3つあります。手前から、④ツチ骨、⑤キヌタ骨、⑥アブミ骨といいます。この耳小骨は、てこの原理を利用して音を効率よく伝えます。外耳道から耳小骨までが音を伝える器官で、「伝音器官」といいます。
伝音器官に何らかの問題があり、聴こえに影響を及ぼす難聴を【伝音性難聴】といいます。
アブミ骨の先にはカタツムリに似た器官があります。これを⑦蝸牛(かぎゅう)といいます。蝸牛の中には約2万本の有毛細胞がきれいに並んでいて、そこはリンパ液で満たされています。有毛細胞が伸び縮みすることで音を神経へと伝えます。この時、音は電気的エネルギーに変換され、その電気信号を⑧蝸牛神経(かぎゅうしんけい)が感じ取り、脳へと伝えます。蝸牛から先を「感覚器官」といいます。
感覚器官に何らかの問題があり、聴こえに影響を及ぼす難聴を【感覚性(感音性)難聴】といいます。
また、伝音器官と感覚器官のどちらにも問題があり、聴こえに影響を及ぼす難聴を【混合性難聴】といいます。
このように、聴こえのしくみは大変複雑で、どの器官に問題があるのか、その程度はどれくらいなのか、それには個人差があるため、聴覚障害=全く聞こえないとひとくくりにはできないのです。制度の上では、「聴覚障害者=身体障害者手帳(聴覚)を有するもの」となっていますが、障害者手帳を持っていなくても「聞こえ」のことで生活に不便を感じている人はたくさんいらっしゃいます。
自身のこと、家族のこと、友人のこと、きこえのことで不安を感じたり疑問に思ったりした時はご相談下さい。
当センターでは、聞こえの相談を2名の言語聴覚士が受けております。詳しくは聞こえの相談のページをご覧ください。
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